2020.10.16(最終更新日:2020.10.16

外来の感染防止対策

感染防止イメージ

前回までは新型コロナ流行下の経営改善を主眼に書いてきましたが、そもそも今なお継続している「受診控え」は、通院することで感染するのではないかという受診者側の見えない不安感によるものが大きいと考えられます。つまり医療の内容とは別の初歩的な課題として、感染対策をきちんと徹底している医療機関であれば選んでもらえる可能性が高まり、そうでなければ患者数回復が厳しい可能性があるということでもあります。 多くの施設ではすでに基本的な感染対策は講じた上で、様々な工夫をしているものと思いますが、今回は参考として幾つか当社支援先の事例をご紹介します。

1.感染防止の考え方

感染防止イメージ

事例を紹介するにあたって、感染防止の基本的な考え方は以下の4点です。

(1)時間で分ける

発熱・味覚嗅覚異常など、新型コロナウイルス感染症の可能性が疑われる症状の来院者に対して、専用時間枠を設けて診察を行う対策方法です。逆に、感染症症状の無い患者さんはこの時間枠には受付を行わずに時間を完全に分離することで、安心して来院できる状況を作ることがポイントです。 施設規模(部屋数)と人員が限られている場合は、この対策が比較的有効だと考えます。

(2)空間で分ける

時間で分けるのに対し、感染症疑い来院者の入館ルート/診察場所を通常診療とは完全に分ける対策方法です。場所および人員の余力が必要なため、完全な分離を十分に行える施設は多くないと考えていますが、車で来院する方が多い地域のクリニックでは駐車場や院内敷地の一角で「ドライブスルー診察」を行っている事例もあり、限られた施設規模の中で何かできることがないかを考える余地はあります。

(3)院内での感染防止策

完全な分離は困難なため院内で感染を防止する対策も重要です。 入口に1名以上を配置しトリアージ(体温測定と定型問診)を行い、疑わしい来院者について然るべき対応をすることは持ち込ませないための重要な対策です。また、スタッフと患者さん相互の飛沫リスクをできるだけ減らすために受付カウンターにビニールシートを設置する、待合室の椅子の配置を変える(ベンチ式の場合は隣り合って座れないように表示をする)等の対応も有効です。防止効果だけではなく、患者さんに対してクリニック側の配慮を伝えるメッセージにもなります。

(4)スタッフの感染防止

また大前提として、医師・スタッフから感染者を出さない・広げないことで診療の継続に努めることが重要です。日々の検温と報告、体調に不安を感じたら出勤しない、休憩室での食事の仕方に気を付ける、家族に濃厚接触者が出た場合の対応を決めておく等、職員が感染源となることを防ぐ取り組みも欠かせません。

2.対策事例

上記のポイントを踏まえた対策事例は以下です。

A.東京都 Aクリニック(内科、小児科)

  • (1)時間的分離
    発熱外来枠を午前診療時間の最後(30分~1時間。発熱者が少ないため現状短時間で運用)に設ける。
  • (2)空間的分離
    スペースと人員の問題で完全な分離は難しいため主に時間的分離にて対応するが、小児ワクチン外来など一部専門外来は通常の外来エリアと完全に区分して実施。待合室の椅子は間を空けて座るように設定。
  • (3)院内での感染防止策
    入口にトリアージブースを設置し、常時1名を配置。(写真1)来院理由を確認し、検温。発熱外来時間外に感冒様症状がある患者さんが来た場合は、時間をずらしての来院かオンライン診療に誘導する。また出入口が2か所あるため入口専用と出口専用に分けて運用している。
    トリアージブース担当者は、終日防護服着用。発熱外来中は、医師は防護服、手袋、フェイスガード着用。その他スタッフはフェイスガード着用。
    ドアノブや手すり、トイレは定期的に消毒し本棚やウォーターサーバー、子供用のおもちゃの撤去。受付カウンターにはビニールシートを設置し飛沫を防止。
  • Aクリニック対策例

    (写真1)

  • (4)スタッフ感染防止
    出勤前の検温で体調の自己確認。発熱等症状時は報告の上で自宅待機。家族に濃厚接触者が出た場合はPCR検査結果が出るまで自宅待機。院内休憩室は手狭なため食事時の定員は3名とし、入りきれないスタッフは院内の空きスペースを使用する。勤務中は常時マスク着用。

B.神奈川県 内科クリニック(内科、小児科)

  • (1)時間的分離
    毎日午前中、11時15分~12時の時間帯で発熱者外来を実施。1日15名までに上限を設定し予約制で運用。電話予約時に当日の上限枠を超えてしまった場合は翌日に案内。発熱者外来の時間中は、対応する医師、看護師は、フルPPE(ガウン、ゴーグル、N95、グローブ)で対応。事務職員は発熱者外来時間中、フェイスシールド、マスク、グローブを装着。発熱者外来のスタート時間に、まだ会計待ちの通常の外来の患者さんが待合室に残っている場合は、処置室に移動してもらい処置室で会計対応をした後、裏口から退出してもらう。(発熱者外来の患者の動線と重ならないように。)
  • (2)空間的分離
    完全な分離はできないが、待合室の椅子が向き合わないように配置を工夫。
  • (3)院内での感染防止策
    発熱者外来中は入口トリアージを実施。

3.支援金の活用

最後に感染症対策支援金の活用についてです。正式には「医療機関・薬局等における新型コロナウイルス感染症 感染拡大防止等支援金」となっており、支援主体は各都道府県となっています。

東京都の例では、無床診療所に対しては令和3年3月末までの期間で感染拡大防止にかかる費用について最大100万円の補助が実施される予定です。

補助対象費用の例示として、

  • ①共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒などの環境整備
  • ②予約診療の拡大、整理券の配布等を行い、患者に適切な受診の仕方を周知
  • ③発熱等の症状を有する新型コロナ疑いの患者とその他の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更、診療順の工夫など
  • ④電話等情報通信機器を用いた診療体制等の確保
  • ⑤感染防止のための個人防護具等の確保
  • ⑥医療従事者の感染拡大防止対策(研修、健康管理等)
が挙げられています。

日常使用する消毒液なども認められるほか、空気清浄機などの設備系投資も申請可能です。設備系の事例として上述のAクリニックでは受付に自前で設置していたビニールシートは清掃がしにくく破損の恐れもあるため、丈夫で恒常的に使用できるアクリル板工事を行う予定です。(写真2)

Aクリニック対策例

(写真2)

また東京都内の別のクリニックにおいては、受付にサーマルカメラを新たに設置し、来院者の体温測定業務の効率化を図っています。(写真3)

都内クリニック対策例

(写真3)

複数用途の組み合わせで最大100万円までの申請が可能なので、自院の状況に合わせて活用方法を決め、より安全な院内環境整備に取り組むことをお勧めします。

情報提供元:株式会社メディヴァ コンサルティング事業部
マネージャー 越路公雄(クリニック事業担当)

当サイトは、株式会社EMシステムズが管理し、情報を編集・提供しています。提供している情報は公開時点の情報です。

投稿等の内容及び提供した情報に関して、その正確性・速報性・合法性・完全性・有用性など、会員に対していかなる保証もいたしません。

自身の判断でご利用下さい。